住いの話  −その3−
建築設計士の佐藤俊彦さんに住宅にまつわる話をインタビューさせて戴きました。(インタビュアー/原久雄)

事務所はご自身の設計で、大本建設で施工された、モダンなコンクリートの建物。中庭を囲んでコ字型に配置され、入り口に道路に面した所にはギャリーが設けられており、この日は羽川再生堂さんの個展開催中で、多くの人が来られてました。中庭の奥が事務所、2Fはお住いとなっています。事務所は明るく静かな佇まい。資料や住宅模型の間には、あちこちにお好きなアート作品が置かれ、居心地のいい空間です。


Q1.
佐藤さんが建築家になろうか、と意識されたのは、いつの頃でなんですか?

あ〜それ、結構早くて、小学校の頃なんですね。小学校6年の頃に、磯崎新さんの建物が話題になったことがあり、「建築家という職業もあるのか」と知ってからでしょうか。それに僕は昔から、いろいろとモノを作るのが好きだったので‥。模型とかをマッチの軸で作ったりとかしたり‥。

そういえば、佐藤さんの模型は細かいですよね。

それに木が好きだったから、建物にも木を使うのは好きですね。コンクリート(RC)の建築もいろいろ作ってはきましたが、その中でも、手を触れるところには、本物の木を使いたいと言う具合に、好きな材料は木でした。


Q2.
クライアント(施主さん)に最初に会われてから、まずどんなお話をされますか?

最初は、「何で家を建てようとなさるのですか?」と、目的や動機を聞いていきます。
結構、それって曖昧な人も多いのですよね。そういう年代だから‥とか、親が言うから‥とか。
なんで建てたいのか、どんな暮らしをしたいのか、など、を聞きながら、自分の考えを確認してもらう。僕らの仕事の半分以上は、そういうクライアントさんの考えを聞いて、道を導いていくような仕事で、話を伺っていく中で、相手に考えを整理してもらうようなことですね。住宅の場合は特に、デザインするよりもその前の段階の話に時間が掛かります。その整理が出来てないと、いろいろな要望だけ聞いてまとめてもうまくいかない。いろいろな人の思いを整理してあげるのが最初で、それから、どんな暮らしをしたいか、などと、少しずつ話を解きほぐしながら、進めていきます。


Q3.
いろいろな作品を見せて戴きましたが、空間の使い方とか、どこかしら佐藤さんの色って出てますねぇ。

ただ、いろいろな場合があり、クライントさんの色もありますから、こちらの色ばかり押し付けるのではダメだと思います。設計者の独りよがりにならない事は心がけています。


(photo by Higuchi Yuki)
Q4.
設計の依頼を受けてから、その建物のイメージってどのように出てくるものなのですか?

そのあたりは最近はボクのほうでなく、ほとんど女房の方がやってくれまして。ま、半分冗談半分ホントでですが‥。(笑)(佐藤設計室では、大学の後輩である奥様も一級建築士。一緒に事務所で働いておられます。)
住いというのは土地の上に建つものですから、先ず、敷地をみせて戴いてから、イメージが浮かんでいきます。それに、住いのイメージというのは、クライアントさんとの話をする中から、徐々に浮かんでくるものです。


佐藤さんのデザインは結構、空間の使い方がいいなぁ、と思うのですが。空間を立体的につかうとか‥

それは僕の興味は、マテリアル(材)とかでなく、やはりまず、空間の構成というのがあり、それを一番に考えますね。光であるとか、空間の中を通る風であるとか‥。色などでも、先ず
白黒の世界でも感じ取れる空間を作りたいと思っています。その後にテクスチャーなり、色などがくるのではないか、と。
たとえば、いくらいい床柱を使ったり,高価な材料を使ったりしても、空間を考えてなければ、何の魅力もない住宅になりますよね。


本棚の対面は中庭に面した大きなガラス戸。新緑や秋の紅葉と、四季の移り変わりを眺めながらのお仕事です。

Q5.
大本建設さんとの仕事は多いですが、ざっくばらんに、やりやすいですか?(笑)

いずれも、特命でやったわけではなく、競争入札の中で、けっこう大本さんが頑張ってくれた結果なんです。ぼくらの仕事の中では、やはりクライアントさんの意向が一番。それから施工業者さんです。大本建設さんはやや独特の会社で、単にもうけ主義でないところがあり、いいモノを作ろうという考え方がまずあって、その為には何をするか、という共通の仕事の土台がありますね。
それに、大本さんの所はパートナーの職人さん達を大切にしておられ、そのチームワークがすばらしいです。大本組とでもいいますか、信頼できる職人さん達が集まっておられます。
ただ、長年一緒にやってますが、ナァナァの関係では良くないので、お互いいい意味で刺激し合い、チェックしあったりする事が大事だと思っています。そういう面ではいい関係だし、めずらしい関係ともいえますね。
もちろん企業ですから、利益は出さなければならない、という前提はありますが。単に住いは建てたら終わり、というわけではなく、その後(メンテナンス)も含めて考えてくれるかと言う事が重要。その為には、企業にも適正な利益は出してもらわなくてはならないし。それでもなお、頑張って安く作ってもらえる、というのが、クライアントにとっては一番有り難いことなんですね。
安く作るところはいくらでもありますが、それに含めて、施主と施工者の信頼関係があるかということが大事なことなんです。
良い家を作るには、クライアントと設計者と施工者の3者のチームワークってのは、やはり大切ですね。

ま、これからも大本建設さんと一緒に、いい住いを提供できるように頑張ってやっていきたいと思います。


という事で、今回は佐藤俊彦さんに、インタビューさせて戴きました。
お忙しい中、有り難うございました。又、いろいろとお話を聞かせてください。  2010年.7月

佐藤俊彦設計室のHPはコチラ