住いの話  −その6−
建築設計士の河村嘉和さんに住宅と設計の話をインタビューさせて戴きました。(インタビュアー/原久雄)

西新の西南大学近くの閑静な住宅街にある、ご自身の設計による、コンクリート打ちはなしのモダンな建物の1Fが事務所です(お住まいはここの3F)。コートハウスの中庭に面して一面大きなガラス。外からの柔らかな光が、室内に自然な陰影を作っています。いつもは6名のスタッフが忙しく働く事務所ですが、今日は静かな休日です。


Q1.
出身は確か山口県でしたよね?

山口の長門市です。下関の北側、海に面した市といったほうがわかりやすいかもしれません。
大学が九州芸術工科大学(今は九州大学の芸術工科学部となっています)で福岡に来ました。芸工大では、佐藤俊彦設計室の佐藤と一緒で、受験の時は隣でした(笑)。大学卒業後、福岡市内の葉祥栄さんの事務所に約7年ほど居たのかな。その後独立して、いま25年くらいでしょうか。

(事務所はもう20年にもなるらしいのですが、躯体のコンクリートがまるで、建設当時のままのように綺麗です。)


Q2.
葉祥栄さんといえば、大原海岸沿いの木下クリニック(今でもある宇宙船のような医院)があったり、いろいろと話題作をつくられた方ですが、その影響ってありますか?

(photo by Higuchi Yuki)
う〜〜ん。なにかなぁ。しいて言えば大学の環境設計学科では、環境→建築→インテリア→家具などのようなヒエラルキー(階層)を持たない総合的な人材育成を理想とし教育を受けてきたのですが、彼の事務所ではそれが当たり前のように実践されていて(笑)、その垣根を取りはらったようなモノの考え方というかそんな影響はあるかもかもしれない。それに、当時,葉さんのところに出入りされていた永井さん(椅子のコレクターとして有名な)などにも。当時のぼくらには触れもしなかった名作の椅子などに座らせてもらったりとか、そんな事もいろいろとあります。
事務所にある椅子もいろいろとデザイナーの名作チェアーがたくさんあります。

Q3.
お仕事は住宅以外にも、スーパーの「トライアル」や、その他のプロジェクトなど、すごく忙しそうですね。

トライアルは前身の「ELBIT」(家電販売店)の時からのお付き合いですが、途中すこし空いて、ここ7〜8年は、毎年かなりの数をこなしています。なにしろ月に2,3店という出店展開ですから(笑)。ただ新規建設だけでなく、空き店舗のリノベーション(改装)も多いのです。ここは、ソフトを含め、そのノウハウを持っているのが強みで、今後も増えるでしょうね。
このような店舗のばあい、坪単価などのコスト意識はものすごく強く、折に触れ、そのような話しを大本さんとしたりもしてたので、大本さんもローコストに対しての意識というか、対応できる強い体質を持つようになったんじゃないかなぁ。
他に、ディベロッパーとロ型やコ型のコート(中庭)を持つ「ロコハウス」というプロジェクトも最近やり始めて、もうすでに数棟は建設されています。
それから、九重で長者原温泉郷プロジェクトという、かなり大掛かりな宿泊施設も現在建設中です。


Q4.
河村さんの建築ではコートハウスというのがよく出て来ますが、これはいつ頃から意識されるようになったんですか?

独立してすぐの頃、市内の密集した町屋の中にある住宅を設計した時のことだけど。その現場に行ったら、ものすごく暗かったわけね、日中でも。そこで考えたのがコートを持つ住宅。これは今でも自分の中では一番気に入ってる作品で、これがその模型。入り口が半透明の大きなスライドドアで、それを開けるとカーポート、その奥にコの字型の家に囲まれたコートがあるわけ。でそこには場合によっては車も何台か入れるし、普段は家の中心の中庭。そして、その壁面には南からの光が当たってそれが反射し、家の中を明るく照らすという仕掛けになっていて、これがなかなかよく、クライアントさんにもすごく喜ばれました。この頃からコートは意識してます。
ただコートは、単に中庭というより、私の中では、屋根のない吹抜けという考えです。時には家の中として機能するし、掃除もしなくていいという(笑)。
それと、たとえば、今の住宅ってのは、家族が向かい合ってるようで、実は背中を向けてる暮らしているのではないか(個室)と。このように、コートを挟んで部屋があると、お互いの気配が感じられるわけね。「まだ起きてるのか」とか、「あ、今、寝たのか」とか。家族の結びつきとか考えると、ベッタリでも、無視でもない、この程度の距離感が丁度いいのではと思うね。
そんな事も含めて、コートハウスというのに、いろんな可能性があると思っています。


Q5.
あと、借景ということもよく言われますよね。

そう、住まいってのは、その中で暮らすわけなので、開口部(窓)などから眺める景色などは、重要だと思うわけです。もともと日本人ってのは、借景を使うことが上手で、昔からの家屋などの庭なども、部屋から眺めた切り取られた風景というのが一番美しいわけね。景色を手でフレーミングしてみるとよくわかるし、写真などでもそうだよね。フレームがあることによって生きる。景色を眺めて暮らすということから、2FにLDなどの生活空間を持ってくる逆転プランなどもよくやります。

事務所のアチコチに沢山の模型。
Q6.
そして、河村デザインと言えば、ローコスト住宅ですよね(笑)。

う〜〜ん(笑)。最初の頃、それで設計してからというもの、どうもそれを期待されたりして。但し、ローコスト=安物ではないわけですから、その辺ははっきりと言います。「ローコストでやりますが、安物は作りません」と。例えば、柱などでも、木材など節があると安いわけですよね。無節の高価な細い柱より、節ありでも太いものの方を選ぶということです。

素材に対するこだわり、というのはありますか?

あります。かなり。たとえば、壁にクロス貼ったりするのは抵抗があるから、クロスを選んだりしなきゃならない時は、もう拷問のように苦痛なわけ(笑)。表面だけ突板を貼ったような化粧材もイヤなわけですよね。それならラワン合板のままがいい。シナ合板やラワン合板は素材として認めています。床材も銘木でなくてもいいから、ムクの材が欲しい。あと、鉄やコンクリート、ガラスなど、素材そのままの質感が表われているのが好きですね。現場検査で鉄骨の端材などが転がっていると、すぐ貰って帰ってりするし。ここにある、大きな型鋼なんか、いいよねぇ(笑)。
たとえば、この建物のコンクリートのPコン穴などは、普通は埋めるが、穴がそのままの方が陰影が出て壁の量感を感じていいなぁ、とそのままにしてるわけ。

素材フェチ?の河村さん、愛おしいように鉄の欠片を触る(笑)。
Q6.
大本建設さんととはいつ頃からの付き合いですか?

15年ほど前かなぁ。ある現場で(その時は直接の大本さんの請負でなかったのですが)その頃は僕も、よく工務店などの仕事のシステムがわからなくて、大本さんに「あなたはここの現場の棟梁ですか?」と言ったりして(笑)。その後、いろいろな現場で一緒したのだけど、設計事務所としてはすごくやり易い、というよりなかなかこんな会社はないわけです。まず、設計図や仕様書が完全に読めて、理解できる工務店というのがなかなかない中で、大本さんとこは、それにプラスしてコストに対してのノウハウもあり、それが会社の強い基盤を作っていると思うなぁ。

Q7.
河村さんは、しょっちゅう大本さんと山に登られてますが、山で仕事の話とかしますか?(笑)

ほとんどしないねぇ(笑)。ま、抽象的な建築の話などはすることあっても、ほとんどないかな。山に登ると頭の中はそんな気分でもないし。
実は、学生時代に登ってて一時やめていたんだけど、大本さんが事務所に来て楽しそうに山の話なんかし出すもんだから、復活して一緒に登るようになって。今年も富士山とか、アチコチの山に随分いきました。


という事で、今回は河村さんに、インタビューさせて戴きました。
長々と、有り難うございました。又、いろいろとお話を聞かせてください。
あ、そうそう、焼き牡蠣のシーズンです。食いにいきましょう。(笑)    2010年.12月

河村デザイン室のHPはコチラ