住いの話  −その13−
建具屋さんの佐藤繁充さんに伺いました。

糸島市の県道二丈大野城線沿い瀬戸に、工場とお住まいが隣接して佐藤建具工業があります。工場の前の道路は広く、周りに住宅が立て込んでないので、これならゆっくりと仕事できそうな環境です。工場の前にはいろいろな材料が野積みされた倉庫があります。今回はたまたま大本さんも来られて一緒に。
(インタビュアー/原久雄)


Q1.
佐藤さんは元々、ここの出身ですか?

いや、生まれは志摩町です。親父が志摩町で建具職人をしていて(後から大工になりましたが)、中学までは志摩町の学校に通い、その後自分が建具屋の弟子で上がる一年前くらい前に又、篠原で建具屋を始めて、ここは自分が25で結婚してから作業場だけ建て、その後隣に家を建てて移ったわけです。オヤジとはここで5〜6年一緒に仕事したかなぁ。で、親父が57歳の時に病気で倒れてからは自分が続けています。そのオヤジも療養後、2年前に亡くなりました。
前は職人さんも居たけど、その人も歳とって、もうあまり仕事したがらなくなったから(笑)、今は独りでやっています。
ま、大きな建て付けの現場などは、今は大工やってる弟弟子が手伝ってくれたりするし。

Q2.
建具屋さんやから、元々器用で、モノを作ったりするのは好きだったんでしょう?
いや不器用やったんやけどね(笑)。ま、器用になる努力はしてるけど。

建具屋してるのは、やはりお父さんが建具職人だったから?
ほんとは大工になりたかったんですよ。定時制高校行きながら大工の修行をするとか。
でも福岡市内の高校に受かったのもので、親が高校に行け!と。高校では一応建築科、そこで大本建設の仕事仲間である奥永(内装業)と一緒のクラスやった(笑)。
で、卒業する時就職も決めてなかったら、オヤジが勝手に福岡市内の建具屋の弟子入りを決めてきたわけです。
その時から建具の仕事を続けているから、いま53歳やし、もう35年になるのかいな。

じゃ弟子入りで就職した時期はバブルで景気の良い時ですよね?

そうですね。とにかく残業残業だった。建具の仕事が終わったら、襖屋の手伝いを夜中の2時ごろまでしたりして。
<大本>
建具屋と襖屋は違うからね。昔は建具屋は奥さんに襖貼らせて、ということもあったが。建具屋は男の仕事で襖屋の仕事は
せんし(笑)。


Q3.
仕事は住宅が主ですよね。どんなカタチで仕事をとるんですか?

まあ、障子などから扉や窓などの建具、それから造り付けの家具など。建具屋の仕事ってのは、個人のお客さんが直接頼みにこられるのはほとんどないので、大体大本さんとこのような建設会社さんからの依頼で請け負うカタチが多いですね。

じゃ、あちこちの工務店さんとの付き合いで仕事されるわけですね。
ここに大きなキャビネットがあるけど、今出来上がったもので、実はもう一年前から頼まれたモノが遅れに遅れてこないだから作り始めて、ようやく完成したモノ(笑)。これはマンションに収まる収納家具(書類入れ)。

<大本>
住宅の仕事でも、造り付けの家具を建具屋に頼むというのは、注文住宅で設計士が入ったりして手がかかる住宅が多いね。建売の住宅などだと、ほとんど既製品で済ましてるのが現状だし。
ただ、この人はいつも暇な時がないと。ま、だいたい工場も小さいし、大量生産するわけでもないので、オレが頼んでもあちこちの仕事があると言って、なかなかしちゃらんっちゃもん。(笑)

でも、こんな大きな家具だと、独りでつくるのは大変でしょう?
そうやねー、組立てる時なんかがね。ウチのとが居る時ならいいんやけど。

奥さんも手伝うことがあるの?
いや、ウチのとも美容師で、週に3回、前原の美容院に勤めているからねぇ。

<大本>
昔だったら、髪結いの亭主というのは奥さんに働かせて、自分は遊んでくらせたとよく言われたもんやが(笑)。でも佐藤さん、ホントに仕事好きやからなぁ。
ワタシも髪結いの亭主になりたいもんです。(原・笑)

Q4.
今の時代、生活様式の変化などで、建具屋の仕事の内容もだいぶ変わってきたんじゃないですか?

そうね。昔の入母屋の家のように和風の建物だと、障子が何十枚もあったが、マンションなどでは、和室に使う数枚だけだとか。それも又、既製品の障子で間に合わせるとかあるし。

でも障子とかは昔は建物に合わせて作るものだったのでは?
<大本>
いや、今はもう障子、窓など既製品があり(枠付きで)その既製品に合わせて納まりを決めるとか、大工が建具に合わせて仕事をするようなのが多くなった。
昔は凝った家だと窓枠などでも木製サッシも作ったりしたが、結局雨掛りの所では、ほとんどアルミサッシに変わってきてるね。

そうですね。収納など昔はタンスなどの置き家具が多かったけど、今の衣類収納は造り付けのものが多いので、タンスなどの需要はないし。その為、大川などの箱モノ(タンスや食器棚などのキャビネット類)を主体に作ってきた家具の産地でも、家具メーカーなどは昔に比べて半分以下に減ってますよね。

<大本>
ここでは、機械やスペースなどで、あまり大きな家具は作れないので、ウチも大川の別の建具屋とタイアップをして、大きなものはそこで作るとか使い分けをしてるね。2mまでのやったら、佐藤さんとこで作ってもらうが。

Q5.
設計事務所の仕事などもされてるので、木材はいろんな材を使うんでしょうね。

材料は必要に応じて仕入れるけど、障子の材や、下地材などはある程度置いていますね。今は下地材はバルサム材とか、扉の面材にはアガチス材とか。障子には杉材、それに米ヒバ材。
昔は(安かったせいもあるけど)なんでもスプルースを使うことも多かったけど、すぐ黒ずむし、あまり使わなくなったね。杉材はこの辺の杉でなく、無節で目が通った吉野杉を仕入れてますね。ヒバ材はほとんどが米ヒバ。
ヒバ材は国産のものもあるけど、元々材が小さいし供給量も少ないので米ヒバに比べるとかなり高いね。
アガチス材は東南アジアからの輸入材だけど、今向こうでは原木で輸出出来ないせいか、一部加工されたこんな材が入ってくるんですよ。(材を見せてもらうと、一面が面取りや溝加工なされた材が積まれている)


<大本>
設計事務所に仕事では図面に、元々針葉樹で作ってたところを、アッシュなどの堅木(広葉樹)で指定されてくるのがあるが、そんなのが後々、問題出たりする場合があるね。長さが2.4Mくらいあると、いくら厚みのある材を使っても、狂ったりねじれたりするのはするわけ。建具職人などは適材適所な木の使い方を知っているので、任せてくれるといいんだけどねえ。
塗装などでも、昔は障子などの建具というのは塗装しないものだったけど、今はどうかしたら障子にも塗装の指定がなされいすることもあるし。(笑)

家具などでは、金物などは次々に新しいものが出てるし、その指定もありますよね

そうですね。全部細かく指定されたりなので、建具の中での金物代の割合がすごく多くなってますね。たとえば、100万くらいの工事で、金物代が30万とか。(笑)
新しい金物は高い上に取付けに時間が掛かったりして、僕は高い金物はいっちょんスカン(笑)。そんなんなら、建具の複雑な仕口のほうがまだいいけどね。昔は建具のロックのとかも木でいろんな方法があったし、それでやってたんだがね。
今の時代、エアコンはありし、窓の気密性などが木もアルミサッシと同様な性能が求められてるんでしょうね。どうも木の使い方としてはおかしいような気もするけど。


Q6.
この組み子のサンプルは?

昔、オヤジがいろいろ図を描いていたから、それを参考に作ったもの。この継ぎ手も、これで何か細工してみて何か作れないかんな?と(笑)。
そこにある煤竹もオヤジが茅葺き屋根の部材を手に入れて、薄くはぎ合わせて、障子の腰板にアクセントとして使ったりしてた材だし。

家の隣が仕事場なので、遅くまで仕事してるんですか?
夜も残業で一杯飲みながら(笑)やってるね。
お父さんもよく飲まれてたんですか?
あ〜、よく飲んでたねぇ。そんな見習わなくてもいいところはしっかり見習って(笑)。

<大本>
だいたい独りで仕事してる職人さんは飲みながらやる人も多いけどね。ま、この人はよく仕事するけど、休みがないくらいに。
今、大きな建具の会社は、大手のゼネコンあたりの仕事がないと続けられない時代やし、又、小さな建具屋も先ほど言ったように既製品に押されているので、今は良いモノを安価に作りきらんと生き残れんからね。ま、佐藤さんは最後まで生き残るやろうけど。(笑)

図面読めるから、いろいろな仕事が出来ますね。
これも大本さんあたりと付き合い始めて、設計事務所さんの図面でやるようになって、図面も理解できるようになりました。この図面も(傍らの図面を広げて)、外部を始め、家一軒分のいろいろな建具の仕事です。

Q8.
仕事して楽しいこととか、大変なことは?。
嬉しいことはやはり、お客さんが喜んでくれたりとか(大本社長が・笑)。逆に大変なのは、いくつも仕事が重なって一緒になった時かな。


Q9.
佐藤さんとこ、お子さんはもう大きいの?
男3人で、上が23歳で2番目と3番目が双子で20歳。長男は全国点々と、3男は愛知県で働いていて、家から通ってるのは2男だけ。ま、もう皆勤めているので、一安心だけど。
子供達とはお酒飲む?
いや、外では飲んでるようやけど、家では飲まんね。
そりゃオヤジと飲んでも酒が旨くないんやろうけど。(笑)
佐藤さん、仕事以外に趣味とかはないの?
特に趣味と言ってもねぇ‥。
でもまだ53歳やし、職人というのは定年もないし、あと20年は働かないかんね。身体が資本だけど。
健康診断はこの頃受けるようになった。でも痛風持ちやし、酒飲み過ぎると痛みが出たりするね。
そりゃ、旨いもの食ったり飲んだりの、贅沢病でしょう。たまには散歩でもして多少運動せな、いかんっちゃない?大本さんに付いて山登りでもしたら?
まぁ、なんか趣味でも持っとかないかんとは思うけどね。(笑)


Q10.
大本さんとの付き合いも15年ということですが、どうです?大本さんとの仕事はやり易い?本人を目の前にして言いにくいやろうけど。(笑)
<大本>
大本はうるさくないとばい。設計事務所さんがうるさいと


業者さん同士で瑞梅寺倶楽部というのを作って、飲む機会も多いし、業者同士の連携がうまくいくのはいいですね。みんな仲がいいし。数年前はその会長もさせらたけど、人前で話すのが苦手やから、酒飲まんとものも言いきらんし。(笑)

奥さんは酒飲まないの?
いや飲まん。だからこの仕事場でこそっと飲んどいて、飲んどらん顔して家に帰って又飲むと。(笑)

そりゃバレてるやろうもん。



いや〜、今回は、仕事一筋!真面目な?佐藤さんにいろいろと話を伺いました。
こんどは、酒もって、こそっと仕事場におじゃまします。(笑)

2015年・6月